マシン・ラーニングから Adobe Xd の大幅アップデートまでと盛り沢山 ~ Adobe MAX 2016 基調講演1日目レポート

Adobe Systems が開催するクリエイティブ・カンファレンス『Adobe MAX 2016』が日本時間11月3日に開催されました。毎年10 ~ 11月の時期にに開催される3日間の大規模カンファレンス。今年は全世界から1万人以上が参加するという過去に類を見ない規模となっており、その期待値の大きさが伺えます。

今回、私 wakamsha がこちらのイベントに参加させていただくこととなり、そこで発表された模様や参加したセッションに関する内容をレポートしていきたいと思います。初日の基調講演ではAdobeの新たなサービスやプロダクト、今後の展望に関する発表がされました。

ダイジェスト

  • Creative Cloud の各種ツールに Adobe Sensei という機械学習による支援機能を搭載
  • Photoshop、Photoshop Mix、Sketch、Stock間の連携がますます強化。デスクトップxモバイル環境での創作がより快適なものに
  • Xdの大幅機能追加。単なるモックアップ作成ツールから協力なコラボツールへと進化
  • 3Dアセットをもっと身近に作れる Felixというツールが新登場
  • モバイル環境での写真編集機能を強化。クラウドベースの非破壊的写真編集が可能に

ド派手なオープニングムービーと共に基調講演スタート

コンサート会場のような巨大ホールにそびえ立つ巨大スクリーンは、38台の 4K プロジェクタによるド派手なオープニングムービーが。日本では考えられないスケールの演出です。

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まずはアドビシステムズ社 CEO の Shantanu Narayen 氏が登場。

今年のカンファレンスは約1万人規模の参加者となりました。加えてそれ以上の人がオンラインでこの発表を視聴しているという、過去に類を見ない規模となっています。我々はクリエイティブの力で世の中をもっと良くすることができると信じております。そのために映像・ビジュアルクリエイターや学生たちと力を合わせてより良いものを作っていっております。

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Adobe Creative Cloud の登場以来、今まで考えられなかったソリューションが次々と生まれました。これまでデスクトップのみに閉じていた制作環境からモバイルデバイス上に広がったことで、場所を選ばずどこでも仕事ができるようになったのです。それはすなわちグローバル規模で創作のコラボレーションが可能となり、ワンクリックで自分の作品を世界中に公開できるようになったということです。

スマートフォンの性能は日々向上しており、もはやコンテンツを消費するだけに留まらずコンテンツを作り出すというクリエイティブなツールへとその存在意義を高めています。カメラの性能は今や一眼レフ以上の機能を持っていると言っても過言ではなく、人の声さえもインターフェースにしてしまいました。

Adobe Sensei – マシン・ラーニングを駆使した新たなソリューション

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ここで一発目の新発表。その名も『Adobe Sensei』。マシン・ラーニングや AI を駆使することでユーザーに様々に様々な情報支援を行い、クリエイションの手助けをします。すなわちこれはユーザーに時間の全てをクリエイティブに費やしてもらうためを目的とした支援システムなのです。Senseiは日本語でマスターという意味です。先生であれば深い経験や知識と学びの精神を持ち合わせているということからこの名前になりました。これにより Adobe Creative Cloud ツールはこれまでにないソリューションをユーザーに提供します。

コラボレーションが生み出す新たなクリエイションの形

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Adobe Creative Cloud は『デスクトップ』『モバイル』『コミュニティ』『マーケットプレイス』という4つの大きな役割を担っています。もともとデスクトップでの利用のみだったAdobe製品がモバイルの領域にまで進出し、場所を選ばずどこでもクリエイション活動をすることができるようになりました。これによってコラボレーション、すなわちコミュニティとマーケットプレイスが生まれたのです。

Adobe Xd はユーザー同士のコラボレーションによってアプリケーションのプロトタイプを作ることができるAdobeの新しいツールです。登場からこれまでに23500以上の投票、500の機能リクエストが寄せられ、そこから100以上の機能が追加されました。コミュニティを介してすべてのクリエイターが一緒にイノベーションを生み出していくことができるようになったのです。

Aobe Stock はユーザーにとってただのアセット提供ツールにとどまらないマーケットプレイスです。そして Adobe Typekit もフォントの提供ツールからユーザーが作成したフォントを公開することのできるマーケットプレイスへと進化しました。

テンプレート – PhotoshopCC の新機能

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Photoshop にテンプレートという機能が新たに追加されました。ローカルにある画像からそれと類似する画像をStock内から検索して候補を出してくれます。Google の画像検索のようなものをイメージしていただければ OK です。候補から選択した画像はそのまま psd 内に取り込むことが出来ます。

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さらにこの画像検索で凄いのがビジュアルキャンバスサーチという機能。なんと画像そのものだけでなく、選択範囲から類似する画像を検索出来てしまうのです。あくまで選択された領域からの検索なので、選択対象には複数の画像要素が含まれていてもOK。MAX2015のスニークピークで紹介された機能が本採用されたかたちになりました。

Photoshop x Photoshop Mix のコラボレーション

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モバイル向けアプリである Photoshop Mix にブレンディングモードが新たに搭載されました。さらに Photoshop のブラシがそのまま使えるようになり、そこで出来たものはそのまま Creative Cloud 上にアップロードすることでデスクトップ版 Photoshop で作業の続きをすることが可能となりました。

これらのデモは全て iPad にて行っており、モバイルとデスクトップの両方を組み合わせた創作活動が可能というのを示す素晴らしいデモでした。

怒涛の新機能発表 – 2016年は Adobe Xd 推しが凄い

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Adobe Xd は、『今の時代、ビジュアルデザインは Photoshop、Illustrator、InDesign だけでは不十分』というユーザーの声を受けて開発されました。Xd はユーザーエクスペリエンスをクリエイションするためのツールなのです。この Xd のようにAdobe がアプリをベータ版として公開するのは非常に珍しいことです。アプリケーションのコンセプトの通り、ユーザー間のコラボレーションによってで作り上げるというのを目指しました。

リピートグリッド

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Excelのリピート機能に似た機能です。リピートされた要素はお互いに同期しており、一箇所の修正内容がリピートされた全ての要素に反映されます。リストなどのデザイン修正に向いているでしょう。

ようやく来たシンボル機能

待望のシンボル機能が Xd にも搭載されました。これによりシンボル化された元データを修正するだけで適用箇所全体に反映させることができるようになります。キャンバスを跨いでの反映ももちろん可能。

画面遷移

トランジション時のエフェクトを指定できるようになりました。紙芝居的なプロトタイプに、よりホンモノに近いインタラクションを与えることができるようになりました。

リアルタイムプレビュー

Xd 上で作成した内容をモバイルデバイス上でプレビューできるようになりました。デスクトップ上での修正内容がリアルタイムでモバイルデバイスに反映されます。かなり軽快な動作で会場からも歓声が上がっていました。

念願のWindows10対応

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タッチ操作に対応したハードであればとても快適に操作することができます。スタイラスペンで入力した手描きテキストがそのまま活字に整形されて画面に反映されます。Windows 版は年末までにパブリックベータリリース予定とのこと。

ちなみに会場では先日発表されたばかりのSurcafe Studioでデモを実演していました。

複数人による同時開発 – コラボレーション機能

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良いチームにはスタイルガイドがあるものです。Xd もそれを全面的に支援するための機能を搭載しました。その一つがデザインライブラリ機能。ライブラリパネルにある色を変更すると、その色に紐付いた要素全てに変更が反映されます。まるでCSS のようです。デザインライブラリも Creative Cloud に共有可能です。

Creative Cloud 内でバージョン管理ができるようになりました。自分の変更履歴だけでなく、チーム全体の変更履歴が閲覧できるようになりました。プログラミングの世界では当たり前となっているバージョン管理がついにデザインの世界でも現実のものとなったのです。

複数人による同時編集

複数のデザイナーが同じファイルを編集しようとすると、アートボード上に誰が編集してるのかがひと目で分かるように編集者名のラベルが表示されるようになりました。編集中はそのアードボードはロック状態になります。編集はリアルタイムで反映される。公演中は言及されませんでしたが、デモを見る限り編集者の名前表示とロックはアートボード単位の様です。

コメント機能

コメント機能を新たに搭載。Xd での制作物に対してチーム内で意見交換ができるようになりました。

Project Felix – 3D 製作をもっと身近なものに

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これまで敷居が高いとされてきた 3D アセット製作をもっと身近なものにするべく、Adobe が一つの提案をしました。

デザイナーは Adobe Stock上に公開されている3Dモデル(素材)を選択し、それに対して2Dモデルを思いのままに組み合わせることが出来ます。

  • Photoshop データをインポートできる(レイヤー保持は保持したまま)
  • 背景に画像をインポートすることもできる、解像度も自在に変更可能
    • 消失点を参照して自然なパースに調整してくれる
  • 合成には Adobe Sensei ( 機械学習 ) によるノウハウがふんだんに活かされているので、より自然な合成を実現(今後も精度はさらに向上するか)

もちろん 3D モデルなのでカメラアングルを自在に変更することが出来ます。レンダリング時間は1分程度と短かめで、かなり快適に作業を進められそうです。PNG形式で出力したものを Photoshop に読み込ませ、更に追い込んだ編集も可能です。デモではPhotoshop のレンズブラーを適用していました。

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現在はパブリックベータ版を公開中とのことです。

Character Animator

あまり詳しくは紹介されませんでしたが、基調講演の中でもかなり強烈なインパクトを放っていたので少しだけ紹介します。

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アメリカの国民的アニメ『The Simpsons』の映像が突然スクリーンに映し出されました。主人公家族のひとりであるバート・シンプソンが喋っていますが、なにやら様子がおかしい。この映像、収録ではなく今まさに声優が話しており、その内容とアニメーションキャラの動きが同期されていました。つまりアニメーションがリアルタイムで生成されているということです。生である証拠にバートの声優はアドビの今日の株価を喋っていました ( 正しいかどうかは我々には分かりません… ) 。

モバイルアプリによる写真編集について

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スマートフォンの高性能化により、これまでは考えられなかった高画質の写真がいとも簡単に撮影できるようになりました。写真の重要性が変わることはありません。しかし、膨大な写真データがデスクトップ、モバイル、Webに分散してしまってるのは問題です。Adobe は以下の3つのキーワードを踏まえた新しいソリューションを提案します。

  • クラウドネイティブ
  • 非徘徊的なワークフロー
  • 近代的なエクスペリエンス

Lightroom Mobile

RawのDNGをiPhone、iPadで非破壊編集できる。少し前まで高度な写真編集はデスクトップで行うのが普通でしたが、モバイル端末上でも同様の事が可能となりました。

Photoshop Fix

デモでは登壇者の顔写真の一部をなぞっただけでその箇所に適した修正が自動で適用されていました ( これもまた Adobe Sensei による支援機能です ) 。顔の皺を取るという修正だが、髪の毛や目元などといった箇所は自動的に回避されていました。

Project Nimbus

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コンテンツの検索といった管理をより快適にします。従来のようなキーワードやタグを写真ごとに設定する必要がなくなりました ( これもまた Adobe Sensei による支援機能です ) 。

非破壊でのフォトレタッチが可能に。レンズ補正、並行・水平の歪み補正、不要なオブジェクトの消去 ( デモでは空から不要な鳥や電線を除去 ) などが可能となりました。

Project Nimbus は 2017年にパブリックベータ版が公開予定です。

おわりに

当初 Creative Cloud は単なるツールのに過ぎませんでしたが、その強力な同期機能のおかげで今では巨大な統合ツールへと進化しました。Adobe Stockでユーザー間のコラボレーションはますます加速するでしょう。Adobe Sensei によってこれまでにない支援機能を搭載することで、Creative Cloud はクラウド本来のポテンシャルを取り込むことに成功しました。

『すべての人はクリエイティブであるべきである』というメッセージを残して基調講演一日目は終了しました。

wakamsha

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リクルートマーケティングパートナーズではたらく Web フロントエンド・エンジニア。サプリシリーズをはじめとした内製サービスの開発メンバーとして、仕様策定や技術選定にも携わる。ブログなどで積極的にWeb技術の情報発信に取り組んでいるが、実はプログラミングよりも洋服を自作する方が得意だったりする。

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