Google I/O 2017 基調講演を完全網羅! Google.aiの取り組みやGoogle Homeのアップデートなど 13 の革新的なテクノロジー

Jumpei Matsuda
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皆さん、こんにちは。Android Developer の daruma と王(wangxuan)です。アメリカ Google I/O 2017 の開催会場から、基調講演(Google keynote)を紹介します。

Google I/O は Google が主催するデベロッパー・カンファレンスです。日本時間5月18日(現地時間5月17日)に開催されました。

Google I/O 2017 基調講演のダイジェスト

  1. Google.ai と呼ばれる取り組みの発表とAI firstという方針への転換が行われた。
  2. 画像認識と Google Assistant を利用した Google Lens というプロダクトが発表された。
  3. Google Assistantの対応端末が増加。SDKも公開され、トランザクション処理にも対応した。
  4. Google Homeが大幅にパワーアップ。今夏、日本でも発売されることとなった。
  5. Google Photos の共有機能が強化された。
  6. Youtubeが360°動画に対応。Super Chat の API が公開された。
  7. Android O の新機能や開発者ツールが紹介された。
  8. 高速かつ軽量なアプリ向け機械学習フレームワーク TensorFlowLite の発表があった。
  9. スタンドアローンのVRヘッドセットの発売が発表された。
  10. 第二世代Tango搭載端末が今夏発売されることが明らかになった。
  11. Kotlin を Android 開発言語として公式サポートすることになった。
  12. TensorFlow Research Could を 大学研究者に無料公開すると発表した。
  13. Google for Jobs という AI × 求人検索サービスが告知された。

Google.ai - Mobile firstからAI firstへ

オープンニングムービーが終わると Google CEO のSundar Pichai ( サンダー・ピチャイ ) 氏が登場。Googleのプロダクトのユーザー数が着実に増加していることを示します。さらにそれらの数字を受け、プロダクトを次の段階へ進めるためにすでにAIの利用に取り組んでいることを述べました。

それに伴い、大量のデータやそこから生まれる利益を伝えるときの考え方が変化しました。つまり、今までの考え方である「Mobile first」から、新しい考え方である「AI first」への転換です。これは本基調講演の主題でもあります。続いて、AI firstによって生まれたプロダクトが複数紹介されました。

例えばこれは画像認識を用いたプロダクトです。まずアクセスポイントの情報を含んだ画像を読み込みます。するとSSIDとパスワードを画像認識により識別し、そのアクセスポイントへ接続します。

このように AI first を掲げた取り組みを Google.ai と名付けました。Google Assistant はその中でも重要なプロダクトであるとして、ここから実際のプロダクトの話へと移っていきます。

Google Lens の発表

Google Assistant 搭載プロダクトとして Google Lens が発表されました。画像認識を介した対話による支援が受けられます。

例として Google Lens でたこ焼きの写真を撮り、翻訳をお願いしてみます。

写真中の文字を認識し、きちんと翻訳をしてくれます。次に見た目を聞いてみます。

たこ焼きの画像がたくさん並びます。このように対話によりコンテキストを維持した支援が受けられます。他にもコンサートの看板を写真で撮ると、イベントを追加するかどうかまで提案するデモが披露されました。

Google Assistantの普及促進 - 対応端末の増加とSDKの公開

Google Assistant は Pixel と Google Home に搭載されていましたが、スマートフォン端末や Wear 端末など様々なデバイスの上で動作するようになりました。[^assistant_limitation]

そしてiPhone 上でも動作するようになりました

さらに Google Assistant SDK が公開されました。サードパーティーへの普及を行なうことで、より良いユーザー体験を提供する試みのようです。

続く発表では Google Assistant を介し、支払い、本人確認、通知、レシート、アカウント作成といったトランザクション処理がサポートされたことも発表されました。Panera のデリバリーを頼むデモが行われ、音声による対話と指紋認証だけで注文が完了することを示しました。

Google Homeの大幅な機能追加

アメリカを除くとイギリスのみ対応だった Google Home ですが、今夏よりイギリスの他に5カ国で新たに販売されることが決まりました。これによりさらに多くのユーザーが Google Assistant の恩恵を受けることができます。続いて新機能の説明に移っていきます。

よりタイムリーで能動的な支援が提供されるようになります。例えば直近の予定を尋ねてみます。すると該当予定の目的地までにかかる時間を交通量なども考慮した上で、何時までに出発すべきか教えてくれます。

さらにハンズフリーの電話機能が追加されました。特にセットアップは必要なく、アメリカとカナダであればどんな電話にも無料でかけられます。発信元電話には固有の電話番号が割り振られます。またただ単に「Call to Mom」と言った場合でも、音声認識による発声者の識別により『誰のMomなのか』まで判断できる、つまりパーソナライズされることも説明されました。

Spotify を始めとするエンターテイメントサービスとの連携により、より豊かなユーザー体験を提供可能に。さらに音声だけではなく、UI を伴った視覚的な返答が可能になったことにも触れました。

ChromeCast を介して、Google Home に天気を訊いた際のデモです。UI を伴うことにより、さらに多彩な表現での支援が可能となりました。次に Google Photos に関する発表へと変わります。

Google Photos の共有機能強化

Google Photos は画像の共有・保存という面を AI を用いて強化しました。

Google Photos は写真の中の登場人物を判別し、それらの人々へ共有しやすいようにサジェストを作成できるようになりました。さらに自分で集めた複数の画像(ライブラリ)を簡単に共有できるようになりました。

続いて発表当日(2017/5/17)から利用可能な Photo Book が発表されました。複数の画像をまとめ、製本するサービス(有料)です。

現在はソフトカバーとハードカバーの2種類があります。発表は Youtube の話題へと移ります。

Youtube が提供する新しいユーザーインタラクション

現在、リビングルームで Youtube を見るユーザーが全体の60~90%に達しています。そのようなユーザーに、リビングルームにいながらにして臨場感を与えるため、360°動画に対応しました。これは Daydream Headset も対応しています。続いて Youtube Live の話に入ります。

Youtube Live は去年、配信ストリーミングが4倍に増加しました。これを受け、ライブストリーム中の配信者と視聴者とがより交流できるようにするための機能を3ヶ月前に追加しました。

Super Chat です。視聴者がお金を払うことにより、ライブチャットストリーム内のメッセージを強調表示できます。現在、配信者は非常に様々な方法で利用しているようです。さらに Super Chat API の公開が発表されました。利用方法は配信者の発想に委ねられるものの、Super Chat を引き鉄とし、現実世界のアクションに結びつけることを想定しているようです。

Android Oの機能紹介とTensorFlowLiteの発表

Android O は Fluid Experiences と Vitals がテーマとなります。

Picture-in-Pictureを有効にすると小さい画面で動作させながら、別のアプリを開くことができます。例えば Youtube を見ながら動画内容をツイートしたい場合に利用できます。

これは Notification Dots です。アプリランチャーアイコンを長押しすることにより、そのアプリの通知をホーム画面で見ることができます。

Autofill with Google。フォームを瞬時に埋めることができます。

もうテキスト選択で頑張る必要はありません。Smart text selectionを使えば適切な範囲のテキストを自動で選択できます。

選択したテキストの属性から、適切なアクションを提示することも可能です。

アプリ向けの高速・軽量な機械学習フレームワークとして TensorFlowLite が発表されました。TensorFlow と同じく、こちらもオープンソースです。続いてもう一つのテーマである Vitals へ移ります。

Vitalsのトピックはセキュリティ向上、OS最適化、そして開発ツールです。

セキュリティの向上に関して、Google Play Protectが発表されました。Google Play では機械学習を用いて、500億のアプリが毎日検証されているそうです。次にOS最適化です。

OS最適化により、起動速度が2倍になりました。そのまま開発ツールの紹介へと移ります。


Play Console Dashboards が発表されました。それぞれのクラッシュについて、何人のユーザーが遭遇しているかなどを一覧で見る機能などがあります。レンダリング遅延のタブもあるので、パフォーマンス向上に利用できるのだろうと推測されます。

より良いパフォーマンスの追求のため、Android Profilers が紹介されました。これは Android Studio 3.0 Canary から搭載されます。CPUやメモリの状態などを並べて表示することが可能です。これにより、パフォーマンス改善の助けとなるでしょう。これ以上の詳細については触れられませんでした。

Kotlin が Android 公式サポート言語に

Jetbrains 社が開発している JVM 言語である Kotlin が Android 公式サポート言語となりました。公式にサポートされないことで導入をためらっていた開発者も多かったかと思います。Kotlin Foundation の設立の可能性も視野に入れているようです。Android Oの話に戻ります。

Android O ではさらに多くの絵文字がサポートされます。他にも Android O の新機能は存在します。

Android O beta の公開

Android O beta の公開が発表されました。ぜひチェックしてみてください。

低スペック端末のサポート - Android Go

アメリカよりもインドのユーザーの方が多いことを挙げ、より多くのユーザーを獲得するには低スペック(エントリーレベル)の端末をサポートする必要があると言います。

Android Go は軽量で、低スペック端末で動作するように考えて作られています。ここでいう低スペック端末とはメモリが1GBよりも小さいものを指します。

それらの端末をサポートする上では、データの使用量を管理し、抑える必要があります。例えば Chrome では Data Saver がデフォルトで有効になるでしょう。

Android Go は191の言語をサポートしています。さらにスムーズな翻訳機能も備えています。

オフライン状態でも利用できること、10MB未満のAPKサイズ、低電力でメモリ効率が良いことが重要です。詳しくは Building for billions を読むと良いでしょう。

Daydream 対応端末とスタンドアローンVRヘッドセットが発売

Daydream 対応端末として Galaxy S8 が今夏発売されることが発表されました。

スタンドアローンのVRヘッドセットが発表されました。ケーブルレス、スマホなし、PCも必要としません。

センサーやカメラをなしにトラッキングを実現する技術 Worldsense を用いています。

Daydream は Qualcomm と手を組みました。


HTC(Vive)と LenovoをパートナーとしてDaydream ヘッドセットがそれぞれ発売されます。発売は年内を予定しています。

第二世代Tangoが今夏公開

年々Tango搭載端末は小さくなってきています。

TangoとGoogle Mapを組み合わせ、Visual Positioning Serviceを提供します。この技術により室内での位置が取得できるようになります。その応用として、例えばホームセンターで希望の商品が存在する場所までナビゲーションすることが可能です。

教育や医療でのARの利用

  • TensorFlow Research Could を 大学研究者に無料公開
  • Google Expeditions では AR を用いた授業を実施
  • 乳がんの検出のためにTensorFlowを利用

求人検索サービス [ Google for Jobs ] の発表

求人検索サービスとして Google for Jobs が発表されました。

機械学習を用いて求人を分類します。多種多様な条件を設定できます。数週間のうちにアメリカでローンチされる予定です。

締め

最後に改めて AI first を強調し、すべてのひとに AI の利益を与えたいとして基調講演の締めとしました。


おわりに

基調講演の大部分は AI が中心であり、AI を組み込んだ新プロダクトと既存プロダクトの紹介に注力していました。
例年と比較すると Android の話が少ないように感じます。
個人的な好みもありますが、Kotlin が公式サポート言語となったことは非常に嬉しいですね。