教育用 Minecraft からディープラーニングを使った英会話学習まで 〜 SXSW 2016 参加レポート #2 SXSWedu セッション編

beniyama
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こんにちは、beniyama ことデータエンジニアの山邉です。前回の記事に引き続き、今回は SXSWedu で聴講してきたセッションの中から気になるものをレポートしたいと思います。

ゲームから学びの場に進化する Minecraft

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Minecraft: Education Edition (講演概要)

Microsoft 社の HoloLense のデモでも脚光を浴びている Minecraft ですが、今や EdTech の領域で最も熱いゲームといっても過言ではありません。この講演では1月に発表された学校教育向けのパッケージである Minecraft: Education Edition が紹介されていました。クラス内の生徒で一斉に遊ぶマルチプレイの強化だけでなく、学校導入のサポートなども充実しているそうです。

Minecraft の世界はキューブでできているので子供達にも扱いやすく、現場では先生が設計した世界で学ぶのではなく子供達が自律的に世界をデザインし作り上げているそうです。また友達に聞いたり Youtube の動画を見て学ぶなど、先生から学ぶ代わりに子供同士で教えあうようになったということでした。

エンジニア視点でも面白いと感じたのが Minecraft の世界でプログラミングや回路作りをすることができる Red Stone や Command Block といった機能です。これによって、例えば壁を作ったり階段を積み上げていくような退屈な作業を自動化することができます。プログラムした通りにロボットや回路が3Dの世界で動くので、試行錯誤しながらプログラミングをより直感的に覚えられるという利点があるそうです。また Design Thinking やインクリメンタルなモノ作りのプロセスを実践するのにも役立っているということでした。

学習ログの規格統一を目指す xAPI

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Capture the Data of Experience (講演概要)

学習履歴データを記録するための規格である xAPI (Experience API) についての講演です。元々 e-learning システム間での学習履歴の引き継ぎや統一的なデータ分析のために作られていた SCORM という規格の後継に当たるそうです。これまで LMS (Learning Management Systems) を対象に制定されていたものの、HTML5 やスマホアプリの登場などで多様化する学習環境に対応する規格が必要になってきたことが背景にあるようです。

xAPI を組み込んだプロダクトや関わる企業が紹介されていたのですが、駆け足で詳細な説明(記録したデータをどう活用しているか etc)がなかったのがやや残念でした。

数字で読み解くオンライン学習のムーブメント

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Massive Online Learning Challenges (講演概要)

1時間からのプログラミング学習を提供する Hour of Code、Khan Academy が提供する夏のプログラミング学習イベント Summer of Scripting、同じく Khan Academy が地域ごとに開催している集団学習プログラムの LearnStorm など、数万人〜数十万人の学習者が一斉にオンラインで学習をするタイプのイベントについてその詳細が語られていました。

Hour of Code はアメリカが国策としてコンピュータサイエンス(CS)教育を強化していることもあり、一大ムーブメントが起きています。これまでに2億時間分の学習が全世界250以上の国々で行われたそうです。Hour of Code はその名の通りまず一時間でもプログラミングに触れてみるというのがコンセプトで、CS を学ぶことよりも自分がコンピュータで何かできたことを実感する(先生についてはコンピュータを教えられたことを実感する)方が重要とのことでした。

またこれまでに20万人もの先生がサインアップをしており、98%が良い経験になったと答え、85%がCSに興味を持ち、49%が一時間の枠を超えて教え続けようとしたそうです。実際18%の先生が Hour of Code 後に CS を教えはじめたと報告されていました。また生徒の男女比も女性が51%とやや男性を上回っており、過去70年に女性が CS の学習に費やした時間を僅か1週間で追い越してしまったという逸話もありました。

Summer of Scripting は9週間に渡るイベントですがこれまで12万人がサインアップし、うち4万人がアクティブユーザで男女比は 6:4 とのことでした。また継続率にも触れられており、最終週の継続率は17%まで落ちるものの一般的な MOOCS (Massive Open Online Course) の継続率が10%程度であることを考えると悪くない数字だそうです。なお、離脱する理由は65%が他のことに忙しくなった、20%が内容についていけなくなったというものでした。

データを学びに活かすために教育現場で考えたいこと

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From Analytics to Action (講演概要)

学習データを取得した後にそれをどのように授業でのアクションにつなげていくか?という話でした。他のセッションでも student intervention(生徒の学習行動への干渉・介入) については幾度となく取り上げられており、参加者に先生が多い SXSWedu ならではの視点だと感じました。

データがあったとしても外的要因が多すぎてそれだけでは問題の特定ができないので、教師やスタッフの知識と合わせて対処する必要があるという指摘がありました。また生徒に干渉した後どうなったかまでを見せないと、(データを使った)干渉が正しかったのかどうか先生達も振り返りができないというのは確かにその通りだと思います。

また生徒のプライバシについても触れられており、opt-in/opt-out の許可は与えられているべきで取得できるから取得するのではなくそれを何に使用しているかまでの透過性が重要と述べられていました。その点については学校とシステム提供者、そして生徒間での契約がどうなっているかも合わせて確認をする必要があります。

データの活用案としては学校のカリキュラム自体の見直しが挙げられており、例えばあるコースの落第率が高かったとしてもそれだけでコースが悪いと判断するのではなくカリキュラムの大枠で何か問題がないか視野を広げて考察する必要があるとされていました。専門性を習得するために何を本質的にするかを考えるべきで、場合によってはそのコースを残して他の要素で調整する必要もあるということです。

また期初にコースを選択する際も落第に陥りがちな問題パターンをシステム側で検出し、選択(決定)してしまう前にアラートを出すという話もありました。例えば授業の組み合わせによっては物理的に教室が離れているために生徒の負担が上がるケースもあるので、その場合は予めその選択がやや無謀であることを伝え、そもそも過度な干渉が必要な状況にならないようにするというのが重要ということでした。

世界に羽ばたく日本の EdTech

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EdTech Japan to the World (講演概要)

デジタルハリウッド大学大学院の佐藤昌宏先生を筆頭に日本の教育事情や最新の取り組みについての紹介が行われました。今回、プログラミング学習の Life is Tech!さんやスマホアプリとプロジェクターで電子黒板をリプレイスする Kocri さんなどがブースを構え、世界に日本の EdTech を広めるため精力的に活動されていました。

学習行動における認知プロセスの違いとその向き合い方

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The Myth of the Learning Style Holds Students Back (講演概要)

Temple Grandin 博士の基調講演で学習スタイルについての言及がありましたが、それを考慮するだけでは不十分で人間には更に細やかな認知プロセスの違いがあるというセッションでした。

日本・中国・アメリカで学習能力の比較実験をしたとき読字障害(reading disability)を持つ生徒の割合は同程度だったそうですが、そもそも中国と日本ではその症状が認知されていなかったため現場ではただ怠けているだけととらえられ報告すらされていなかったそうです。一方アメリカでは読字障害を持っているのであればまた別の教育アプローチを試みるだけということで、まず原則として学習は楽しく気軽であるものという理解があるべきという主張がありました。

また上の写真にも写っているように数学の問題一つを解くにしても生徒個々人で膨大なパターンのアプローチがあり、従来の数パターンの学習スタイルという区分は十分ではないとのことです。コンピュータを通して問題を解いても、正解か間違いかを判定するだけで根本的な理解・修正につながらないということも言われていました。日本の指導要領ではよくある間違えは単純に訂正をするべきではない(それぞれ理解の仕方が違うのでじっくりと考えさせながら理解を深めるべき)とアドバイスされているそうです。

教育現場での議論は先生が何をすべきか?という話が多く生徒がどうなりたいか?という視点が欠けているという問題提起もあり、リソースの制約を言い訳に安易に学習スタイルに応じたパーソナライゼーションを行うべきではないという指摘もありました。

EdTech スタートアップの優勝者はディープラーニングを組み込んだ英会話アプリ

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SXSWedu Launch (講演概要)

スタートアップのピッチコンテストもセッションと並行して行われており、最終的には勝ち残った3組が決勝で競い合いました。優勝したのは英会話練習用アプリの ELSA です。

ELSA に向かって例文を読み上げると理想的な発音だったかどうかを判断し、フィードバックを返します。例えば I'm so nervous, it hurts. という文章の nervoushurts のように似た音が正しく発音できていたかをテキストの色でフィードバックします。ただしテキストの色だけだとどう直せば良いか(説明は書いてはありますが)よくわからないので、もう少しわかりやすく可視化ができると面白いと感じました。

また ELSA は発話認識にディープラーニングを採用しているらしいのですがその仕組みは秘密ということで詳細についてはわかりませんでした。弊社の スタディサプリ English の 『なりきりスピーキング機能』 でも発音評価ができますので、どの程度精度が違うのかは興味のあるところです。

SXSWedu についてはこれくらいにして、次回は SXSW Interactive のレポートで締めくくりたいと思います。